男待った

親も大事だがもっと大事なものはいっぱいある。
あなたの周りには大切な人がいっぱいいるんだ。
親よりも自分と周りの人の未来を大切に

 『ルポ介護独身』(新潮新書)の著者で、多くの介護者の取材をしてきたルポライターの山村基毅さんも言っている。「もう無理だ、限界だと感じたら、親を放り出してもいいと思うんです」と。自分が倒れたら、本当にすべてが瓦解してしまうからだ。

 うちの旦那が言ってます。

 「親よりも自分」

 認知症の義父は老健で生活していますが,だいたい2週間に一度くらいのペースで旦那が小学生の娘と面会に行っています。別に無理に子供を連れて行っているわけでは無いんですが,うちの子は義父の施設に行くのを嫌がらないんですね。むしろ「私が行かないと,おじいちゃん喜ばないでしょ」と旦那について行く感じです。この娘ちゃんがついて行ってくれることって,実は旦那の心の負担をとても軽減してくれているんです。

 当初,病院(精神)に入院していた頃,旦那は病院自体をあまり娘に見せたくない気持ちが強かったので,旦那一人で面会に行っていたのですが,ある日娘の方から行ってみたいということでしぶしぶ連れて行くことに。そこは高齢者専門の精神病院で認知症の患者がほとんどの病院で,普段はみんなロビーで椅子に座ってただうつむいているだけ。ですが,当時幼稚園の娘が来ると,義父は当然のこと,その他の高齢者も自然と笑みがこぼれるのです。小さい子の力ってすごいんですね。娘も先入観も無いせいか,「あのおじいちゃん何かぶつぶつ言ってるね」「こっち見て手振ってくれてる」「おばあちゃんずっと寝てる」と言った風に怖がることもなく。それから,娘ちゃんは毎回,面会にはついて行ってくれることに。

 旦那もそうですが,介護には相当な精神的ストレスが伴うものです。当初,旦那も病院からの緊急の電話や面会でのやり取りで相当ストレスが溜まっていましたが,旦那は自分に「最悪,全部病院や施設に任せれば良い」と言い聞かせ,自分で精神的な逃げ道を作っていました。それは今も同じで,「無理と感じたら面会には行かない。ほっとく」と良く言っています。また,「自分で動いていれば誰か助けてくれるやろ」とも言っています。できる範囲で精一杯するけど,ダメになる前に早めに自分でギブアップする。これって,本当は家族のことを思ってのことなんですね。

最初に述べた旦那の言葉「親よりも自分」には,続きがあって

「自分よりも君と子供の未来」

自分を守ることは,家族を守ることなんですね。

 まあ,それでも2週間に1度のペースで「そろそろ行くかぁ」と娘と一緒に面会に行っていますが,娘の存在が無かったら既に限界がきていると自分で言っています。

 介護は外から見るより大変。大事に思う人の介護でも耐えきれないことも,ましてや,嫌いだけど家族だからやらざるをえない人にとっては苦痛でしかない。

 みなさんも,大事なのは自分と周りの大切な人の未来。そう言い聞かせて,介護からの逃げ道を作ってはいかがでしょうか。