男困った

悲しい事件が多いな。
どこの業界でも厳しい人材不足。でも時間をかけて人材育成していくことが大事だと思う。

 高齢者ホームの選択肢が多様化するなか、老後の安心を左右するようなさまざまな課題・トピックも浮上している。昨年3月には、介護施設の職員による高齢者への虐待が2015年度中に408件あり、過去最多を更新したことが報じられた。これは厚生労働省が調査を始めた06年度から9年連続の増加だ。発売中の週刊朝日ムック「高齢者ホーム 2018 プロに教わるやすらぎの選びかた」では、その背景を解説している。ホーム選びで気をつけておきたいこととは。

 介護士の人数は毎年増え続けていますが,それでも介護士が足りていない状況です。普通に考えると介護士は余っても良いはずなんですが,現場で介護士が足りないということはどういうことでしょう。それは単純です。辞めていく人が多いからです。

■なぜ介護士は辞めていき,その穴は誰が埋めるのか?

 なぜ介護士の離職が多いのか。それは単純にきついからです。根性が無いとかいうレベルでは無く人間の限界を超えてきているんですね。

 辞めていく人が多くても介護士が余っている状況であれば問題は無いのですが,実際は何でもこなせるベテラン介護士の取り合い状態で経験豊かな介護士が不足しているのが現状です。その結果,介護士になりたての右も左も分からない新人さんが即戦力として現場で働かざるを得ない状況となっています。介護士の数が毎年増えていっていると言うことは,新人がどんどん増えていっているだけですからね。

■無意味な効率化は,負のスパイラルに陥る

 世の中,無駄を省き効率良くすることが求められ,新しい人材にも即戦力を求めます。ですから,大学でも専門学校でも基本よりも実践で役に立つことを優先して教えます。ですが,大学だろうが専門学校だろうが卒業したとはいえ,即戦力なんて無理な話です。卒業後,就職した会社でゆっくりと育っていくのがどの世界でも普通のことですし,長い目で人を育てていくのが人材育成だと思います。ですが,介護の現場では,限界ギリギリの介護士で回しており,人材育成なんて言っている暇が無いんです。その結果,新人には荷が重い仕事が数多くふってくるので当然処理できなくなり,そのしわ寄せはベテラン介護士にいきますがベテラン介護士にも限界がありますので最後には処理できない仕事量になってきます。その結果,限界を超えたベテラン介護士は辞めることとなり,その穴埋めを経験の浅い介護士や新人がこなすという負のスパイラルに陥ってしまうのです。

 無意味な効率化は利用者にも良い影響はありません。本来,介護を受ける高齢者は,自分にゆっくりと時間を割いてほしいもので,効率化とは真逆です。でも,全てを効率化し一人一人に割く時間を短くしないとこなせない仕事量になっており,高齢者のペースに合わせていては仕事がこなせないのです。そのしわ寄せはサービスを受ける高齢者にいきます。当然,高齢者は不満がたまっていき,介護士に強くあたるなどするようになり,それがまた介護士の負担となり,それを感じ取った高齢者はますます不満がたまる。負のスパイラルです。

■本当の効率化は高齢者の虐待を無くす

 無駄を省いて効率良くしていったら人を減らすことに成功したが,人がまったく育たなくなる構造が出来上がった。介護の現場では人と人とが関わるところであり基本通り物事が進むなんてことは無くイレギュラーなことばっかりです。新人から即戦力として扱われ十分に成長する期間を与えられない介護士に心の余裕などあるのでしょうか。心の余裕の無さは社会の余裕の無さ。高齢者への虐待は,こういった間違った効率化によって余裕を失った社会が生み出したものに思えます。

 人と人が面と向かって時間をかけて話をする。実はそれが最も効率が良いのかもしれません。世の中から,悲しい事件が無くなることを願います。